2006年8月

バッテリー (5) (角川文庫)

バッテリー (5) (角川文庫)

本作では、これまでの巻と比べ、目立った出来事はない。ストーリー展開で魅せるよりも、巧、豪をはじめとする各登場人物の心の動きが中心的に綴られている。恐らく次巻で述べられるであろう新田東と横手の試合を前に、各選手の心の成長と、彼らがどんな気持ちで試合に臨むのか、そのスタンスを丁寧に描きたい、という作者の思いがあるのだと思う。
新田東と横手の練習試合、巧は果たして潰されてしまうのか、さらなる成長を遂げていくのか、次の展開が楽しみになってきた。

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海のふた (中公文庫)

海のふた (中公文庫)

主人公がいとことひと夏を過ごす。。。TUGUMIのような設定にも思えるが、中で述べられていることはまるで違う。どこか生活に疲れていた主人公といとこは、ひと夏、伊豆のまちで一緒に生活し、海や山の自然の恩恵を受けることで、だんだんと生きる強さを見につけていく。
ロハススローライフといった最近流行の言葉で本書を括りきることは出来ないとは思うが、自然崇拝的な意味合いが強い作品だと思う。ありのままの自然の素晴らしさ。シンプルに正直でまっとうに生きることの素晴らしさと強さ。山や海の自然が人の生活や心を豊かにしてくれること。そうしたことが、ひと夏の彼女達の経験を通じて語られているのだ。
ここ数年の彼女の作品を読むと、彼女の作風がかなり変わってきたことに気づく。一時期の、多重人格やオカルトへの影響が多分に見られた頃のよしもとばななとは作風がガラリと変わってきたのだ。デビューしてからTUGUMIあたりまでの第一期。アムリタから結婚までの第二期。そして結婚し、子供が生まれたことで彼女の視点が変わり、第三期に入った印象を受ける。

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アルゼンチンババア (幻冬舎文庫)

アルゼンチンババア (幻冬舎文庫)