トップランナー

caltec2005-07-21



NHK教育「トップランナー」を見る。今回のゲストは小説家、福井晴敏
亡国のイージス』『終戦のローレライ』などの話題作の作者だ。
僕は彼の作品を読んだことはないのだが、今日の放送は興味深く見た。たまたま警備員として働いていた頃に同僚に彼が暇つぶしに書いた作品を見せ、それが受けたことで小説を書くようになった、という。


もともとが文学青年ではなく、映画青年だったということも関係しているのだろうが、彼の書く作品は状況描写に優れ、エンターテイメント性が高いという。それはおそらく作品の世界観を映像としてまず思い描き言葉にしているからだろうか???


番組中で一番興味を引いたのが、彼がもはや作家だけの活動をしていない点だ。最新作では、何と映画会社相手に企画を立て、映像(映画)と小説を同時進行させていたという。それは、彼が描き出したいある世界観を実現する最適な方法(媒体)を求めてきた結果なのだろうと思う。そして、それは彼が映画青年だったことに大きく起因していると僕は思う。彼は、小説の持つ言葉の力をひたすらに信じて書き続ける作家ではなく、自分の描き出したい世界を実現することを目的とする表現者なのだ。


そしてそんな彼が行おうとしていることは、小説界と映画界の融合なのだろう。番組の中で彼は次のようなことを語っていた。

・・・・
今は文字離れなどもあり、小説が売れる時代ではない。作家先生の作品を待っているような昔の体質が通用するような時代ではなくなっている。反対に映画界は、映画化する企画を待っているところがあり、自ら企画を立てアクションを起こしていく体質ではない。彼が行おうとしていることは、その両者を近づけるような仕事なのかもしれない。


そこから浮かび上がってくるのは、もはや作家ではなく、一プロデューサー、一実業家の姿である。警備会社に勤めていたときに同僚を楽しませようとした彼の試みは、今や日本国中の人を楽しませようという試みに変わっているのかもしれない。