上村松園展

caltec2010-10-10



東京、竹橋にある国立東京近代美術館にて、「上村松園」展を観る。


実は前々から気にはなっていた本展覧会。会期の早い時期に行こうとは思っていたものの、上村松園を取り上げた番組(『新日曜美術館』、『美の巨人たち』)が放映され、事前準備が終わってから行こうと思っていたところ、終了間際の鑑賞となってしまった。


本展覧会の概要は以下のとおり。

京都に生まれ育った上村松園は、若くしてその頭角を現し、文部省美術展覧会(通称文展)など各種展覧会を舞台に気品あふれる人物画を次々と生み出しました。


その作品には単なる女性美ばかりでなく、画中の人物のさまざまな感情のひだが、市井の人々の営み、歴史や物語、謡曲などの題材にのせて表わされています。松園は近世初期風俗画や浮世絵など人物表現の伝統の厚みを受け止める一方で、対象の内面や精神性の表現が追求された近代という時代と向き合い、自分ならではの人物画を模索したのです。


本展覧会では、松園の画業を大きく3期に分け、代表作約100点によって創作の軌跡をたどるとともに、その本質を改めて探ります。


本展は、5件の重要文化財を含む貴重な鍋島作品によって、「技」「色」「構図」「モチーフ」の側面からデザインの魅力をご紹介していきます。また、現代における色鍋島の名門・十四代 今泉今右衛門氏の作品も登場します。正統ながらも新しく、上品ながらも分かりやすい。この夏、展示室でお気に入りの一枚に出会ってくださることを願ってやみません。


本展覧会の構成は下記のようになっている。
  1章 画風の模索、対象へのあたたかな眼差し
  2章 情念の表出、方向性の転換へ
  3章 円熟と深化
    3章−1 古典に学び、古典を超える
    3章−2 日々のくらし、母と子の情愛
    3章−3 静止した時間(とき)、内面への眼差し


全体を通じて驚いたのは、描かれている対象のほとんどが「女性」であるということ。「女性」以外の登場人物は極端に少なく、「子供(赤子)」が少しあるくらいと、1章の画風の模索をしていた10代〜20代前半のときくらい。


こう表現すると極端かもしれないが、「女性による女性のための女性画」というのか、同姓ならではの目線で描かれた女性画は、優しさやたおやかさ、みたいなものに溢れているように感じた。


1章の十代の頃の作品から順を追って観ていくと、本人が描きたいものが次第に明確になっていき、作品がシンプルかつ洗練されたものになっていく、という過程を経るのは他の巨匠と同じ。


作品と対峙しているうちに、松園の描く女性の目線の先にある風景(虹)が感じられたり、鈴の音が聞こえてきたり、、「描かれていないものを感じ取ることができる」広がりのある世界感、そんな作品づくりができるのは素晴らしいと感じた。


また作品から感じる優しさや、清々しさは、彼女の描く「線の美しさ」や「色の鮮やかさ」「模様の組み合わせの妙」があると思う。年月を経ても「新しい」「新鮮な」感覚を与えるのも巨匠の作品ならではである。


企画力  :★★★★☆
展示方法 :★★★★☆
作品充実度:★★★★★
満足度  :★★★☆☆



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