乗客・乗組員全員無事でよかったです。

中華機炎上:乗客らシューター脱出 漏れた燃料に引火か


20日午前10時半過ぎ、沖縄県那覇市那覇空港駐機場で、台北那覇行きの中華航空120便=猷建国機長(47)=が炎上した。同機は、着陸後、駐機場に移動したところで、爆発した。乗客157人は全員脱出シューターで逃げて無事。乗員は8人いたが、1人がけが。那覇市消防本部が消火活動に当たった。エンジンからの燃料漏れを整備士が確認しており、沖縄県警や国土交通省は、漏れた燃料が引火した可能性があるとみて調べる。


中華航空国交省などによると、右側のエンジンで燃料が漏れているのを地上の整備士が確認していた。激しく爆発、炎上したのは左側のエンジンで、右側のエンジンから出火し、爆発は左側で起きた可能性もある。中華航空によると、7月6日と8日にエンジンの内視鏡検査を実施したが、異常はなかったという。


同機は午前10時27分に着陸。同34分に41番スポットに到着直後、煙が上がり、4カ所ある脱出口すべてを使い、乗客らが逃げた。爆発は35分ごろだったという。乗員4人程度が機内に取り残されたが、その後救出された。県警によると、乗客にけが人は出ていない。乗客には幼児2人が含まれている。57歳の男性と7歳の女児が気分が悪くなり病院に運ばれた。着陸まで機長と管制官との交信では異常はなかったという。


目撃した空港飲食店に勤務する男性職員によると、午前10時半ごろ、爆発音がした後、約10メートルほど火柱があがり、その直後に黒煙が流れ始めたという。警察庁によると、空港の整備士1人がけがをした。


国土交通省は、航空・鉄道事故調査委員会のメンバー4人を現場に派遣した。中華航空によると、乗客157人のうち、日本人は23人。乗員は8人でうち日本人は1人。同機は、現地時間で午前8時15分ごろ台北を発った。中華航空台北の本社スタッフを現場に派遣する。猷機長は、中華航空に入社して6年目で、飛行時間は7874時間。


炎上したのは、ボーイング737−800で、短中距離用の航空機で、全長は約39.5メートル、客室幅約3.5メートル。座席数は162席から189席。


毎日新聞 8月20日15時04分)

着陸前後に燃料が漏れ、引火か 中華航空機炎上


那覇空港で20日に炎上した中華航空ボーイング737―800型機は、人気の高い小型機「737」の中でも最新鋭機だ。火災の直前にエンジン付近の燃料漏れが確認されているが、通常通り着陸した航空機からなぜ燃料が漏れたのか、何が引火したのかは、はっきりしない。けが人はなかったとはいえ、中華航空にとって、人気の高い日本便での事故は経営的にも大きな打撃だ。


燃料漏れはなぜ起き、何に引火してこれほどの爆発が起きたのか。


航空機の燃料は、両主翼と機体中央下部にある三つの燃料タンクから、主翼にある二つのエンジンにパイプで供給される。中華航空の飛行計画によると、事故機には約4700キログラムの燃料が残っていたとみられる。これはあと1時間40分ほど飛行できる量だ。


国内の航空整備関係者は、燃料がエンジン内だけでなく、地上にも漏れ出したことに着目。「漏れた燃料は比較的大量だと思われる。エンジンに近い細い管ではなく、燃料タンクに近い側の太い管が損傷したのではないか」と見る。


大量の燃料漏れが飛行中に起きていれば、操縦室の計器に不具合が表示される。だが、飛行中に同機から管制機関への不具合報告はなかったといい、「燃料漏れが起きたのは、着陸前後の可能性が高いのではないか」。この関係者は推測する。


では、漏れた燃料に火がついたのはなぜか。


ある整備士は、「燃料が高い濃度で混じった空気は、ちょっとした火花程度でも引火する」と指摘する。 到着時に燃料漏れと煙が出ているのが見つかったのは、機体右側の第2エンジンだったが、激しく炎上したのは機体左側の第1エンジンだった。


元首席航空事故調査官の藤原洋氏は、こうした状況から機体左側の燃料タンクからも燃料漏れがあったのでは、とみる。


一方で、エンジンを止めた後、高温になったエンジン内の残留燃料が爆発する可能性も指摘。それを防ぐため、エンジンに残った燃料をタンクに押し戻す装置があるが、「そのシステムがきちんと作動していたかどうか」(藤原氏)。


航空機事故に詳しい日本航空元機長の桑野偕紀(ともき)氏は、事故機の映像でタイヤがバースト(破裂)していることから、「着陸直後のタイヤは、特にブレーキ部分が熱くなっている。地上に漏れ出した燃料がこれに触れ、引火した可能性もある」。


朝日新聞 2007年08月20日21時42分)

中華航空機、熱に弱いアルミ合金製 短時間で無残な姿に


那覇空港で炎上した中華航空ボーイング737―800型機は、エンジン付近から出火後、短時間で機体全体に火が回り、胴体がひしゃげるように変形して、無残な姿をさらした。軽量の素材を使って燃費を向上させた最新鋭のジェット旅客機は、出火すれば火の回りが早いというもろさを抱えている。


「航空機に多く使われるアルミ合金は熱に弱い。初期消火に失敗すればひとたまりもない」 航空事故調査や航空機の構造に詳しい藤原洋氏(元・運輸省航空事故調査委員会首席航空事故調査官)は指摘する。


例えば、アルミ合金の一種であるジュラルミンの場合、鉄の3分の1の重さで機体の軽量化に役立つ。しかし、約1200度で溶ける鉄に比べて熱に弱く、650度程度で溶け始める。


中華航空機は、燃料漏れが見つかった右側エンジン付近で火災が発生し、胴体を挟んだ左側エンジン付近まで燃え広がったとみられている。 一般に旅客機は着陸の際のトラブルを想定し、別の空港まで移動してさらに上空で数十分間、旋回できるだけの予備燃料を積んでいる。 藤原氏は、翼内タンクの大量の航空燃料に引火し、高温で焼かれたアルミ合金が溶けたことで、船舶のような強固な柱がない機体が変形し、自重で崩壊したとみている。


多くの空港では、普段から航空機事故を想定した消火訓練をしている。長崎空港長崎県大村市)にある国交省の施設には、ボーイング767型機の実物大の模型の周辺から炎が上がる訓練装置がある。 しかし、実際の火災では、いったん機体が溶けて穴が開くと、機内の手荷物や座席などに一気に燃え広がる。 「着陸後も燃料は豊富なだけに、いったん引火すると、なかなか消火は難しい」という航空評論家もいる。

朝日新聞 2007年08月21日00時42分)