2007年8月


見えないドアと鶴の空 (光文社文庫)

見えないドアと鶴の空 (光文社文庫)


今まで他者と自分との関わり方や、社会・世間との関わり方についてを主にテーマに扱ってきた(caltecは思う)白石一文の最新文庫本。


本作では、意識の深いところにまで考察が深まり、認識・魂・信念・高僧などのキーワードと共に、宗教や超常現象(超能力)までが登場してくる展開となっている。


他者の存在意義は、実は目に見えるものではなく、「目に見えぬ何か」によって構成されている、つまり思い出や記憶の中にある他者のイメージや想いによって、他者との関係が構築されていくのだ、ということなんだと思う。 それが発展していくと、ある高僧が語る宗教観・倫理感だったり、超常現象に繋がっていくのだとも思う。


彼の作品の中では、今回が一番、娯楽小説として楽しめる要素が強かったように思うが、いろいろと考えながら読んでいく要素もまた多く、なかなかにヘビーな作品だった。


この作品、映像化すると面白かもしれないな。