秋の特別企画 十三代 今右衛門展 Part I 鍋島とともに

十三代今泉今右衛門が逝去して10年。
この度、当美術館では「十三代 今右衛門展 Part I 鍋島とともに」を開催いたします。
十三代は若い頃から、伝統工芸は現代の人にも通じるものでなければならないという自論から、生涯、十三代としての現代の色鍋島の世界を追求してきました。その結果、鍋島の裃を着たような堅苦しさからの脱皮として吹墨・薄墨の技法を確立させましたが、同時に江戸期の意匠の中に、普遍的な美意識を見出しそれらを作風の中に取り入れたものも多く見られます。
今回は現代の色鍋島を追い求めた十三代の作品と、その意匠と関連する江戸期の鍋島も併せ展示いたします。
十三代が好んだすすきの穂が風にゆれる季節。十三代の在りし日を偲んでいただければと存じます。


昨年観たサントリー美術館の「誇り高きデザイン 鍋島」展で、十四代今右衛門の作品が展示されており、それを見たときから「今右衛門いいなあ」と感じていたcaltec、今右衛門古陶磁美術館にて十三代の作品が展示されるということで、実は密かに(!)楽しみにしていたのが本展覧会。


本展覧会の展示作品を見ながら、伝統的な鍋島の文様をモチーフにしながらも、彼が確立した吹墨・薄墨という独特の技法を駆使し、大胆なデザインの意匠で現代的にアレンジしたのが十三代今右衛門の特徴であるように感じた。


それに比して十四代は、吹墨・薄墨の技法を駆使し、雪模様など、より洗練された現代的なデザインを特徴としている。


古い鍋島と現代の今右衛門の作品、鍋島の赤絵技師から発展したという今右衛門の伝統を見るには良い展示内容であると感じた。


今右衛門窯


今右衛門古陶磁美術館の隣にあるのが、今右衛門の展示場。昔の商屋の応接室のような一室に、今右衛門の作品が展示されている。作品一つ一つのクオリティーが高いのはもちろんなのだが、そのクオリティー同様値段も高く、また敷居も高いような感じを受けた。


いつか彼の作品を気兼ねなく買えるようになる日がくるのだろうか?、


香蘭社


今右衛門窯を後にして、すぐ近くにある香蘭社へ行く。香蘭社の2階がギャラリーになっており、昔の有田焼や、香蘭社の高級ラインの陶磁器を(無料で)堪能することが出来る。


今右衛門窯と比べ、香蘭社は日常使いの陶磁器。いわゆる侘び寂びの焼き物ではなく、普段使いのティーカップやお皿など華やかで値段も手ごろな商品が並んでいる。普段のモードでは全然「あり」だとは思うのだが、今回のたびの目的からすると、香蘭社は、2階のショールームで十分な気がした。


有田陶磁美術館 (100円)


次に向かったのが、有田陶磁美術館。ここはもともと蔵であった建物を陶磁器を展示する場所に変えた、という性格の建物で、古伊万里、金襴手、鍋島、柿右衛門など、有田/伊万里の特徴的な陶磁器が展示されている。


展示規模もこじんまりとしており、鑑賞者も他にはおらず、ゆったりと展示内容を楽しめる場所だった。蔵の作り自体を見るのも面白かったりします。


柿右衛門


次に向かったのが、有田といえば、、柿右衛門様式。ということで、柿右衛門窯へ。有田の他の窯とは離れた場所に居を構え、そのショールーム・(旧)工房がかなりの「立派」な構え。
※お寺や、地主(表現が古いですが)の建物のようにも思えるくらい堂々としている。


乳白色ベースきれいな生地の上に、余白を充分に活かした、日本的なデザインの柿右衛門様式の文様が施されている。生地色の独特の白と、その上にある柿右衛門らしい朱の色。実物を手にとって見ると、その作品を表現する言葉としては、
やさしさ、うつくしさ、たおやかさ、繊細さ、という言葉が浮かんでくる。柿右衛門様式は、今回の旅中で観た中で一番女性らしい陶磁器であったように感じた。


奥の展示室には十二代、十三代酒井田柿右衛門作品の作品が展示されていたが、現代より、十二代酒井田柿右衛門の作品の方が個人的には良いなあ、と感じた。


源右衛門窯


今右衛門、柿右衛門と見てしまった後では、源右衛門窯は「いまどきの窯元ですなあ」という感は強く。上記2窯と比べると、素朴な風合いの作風が多いとは思うが、その分飽きは来ないデザインなのかなあ、とも感じたりした。


蔵を改造した博物館も見学したかったが、土日祝日は閉館(つまりは平日のみ開館)とのことだったので、庭のみ見学して、源右衛門窯を後にした。


波佐見焼


本日最後の見学は波佐見焼。有田(佐賀県)とは隣町の、こちらは長崎県にある陶磁器製作が盛んな街だ。東京のインテリアショップ、雑貨店でよく目にする白山陶器ショールームへと。
白山陶器の製品が所狭しと陳列されたこのショールーム。いろいろなデザインの作品があって、観ているだけでも楽しい。


東京のショップと比べ、6割程度の値段で購入することが出来るとあって、「普段使いの」陶磁器を数点お買い上げ。それでも6000円程度。 安い。


今回の「焼き物の旅」編はこれで終了となった。



人気ブログランキングへ