『ヴェネチとイスラム展』

ドゥカーレ宮殿の一番の目玉、「大評議の間」から「投票の間」に行こうとすると、係員に止められた。「ここからは別のチケットが必要だ」。良くみると、ここからは「ヴェネチアイスラム展」の会場となるらしい。
チラシには「ヴェネチア共和国とイスラム間の関係についての大展覧会が、パリとニューヨークに続いて、ヴェネチアにやって来る!街のシンボルのドゥカーレ宮殿で開催」と書いてあるとおり、まさに本場のヴェネチアにやってきたのである。これは良い機会だとばかりに本展覧会も見てみることにした。


展示会場は大きく分けて6つのセクションに分かれており、英語の表示でもそれぞれのセクションの解説が書いてあるのでわかりやすい。海洋国家、貿易国家であるヴェネチアはヨーロッパの他の都市に比べて、イスラムの影響を早くから受けており、それが衣装などの装飾品や建築に影響を与えている(サン・マルコ教会もそのひとつ)という第一セクションから始まり、ヴェネチアイスラムと関係が年代を追っての分かるようになっている。最後のセクションでは、イスラムとの戦争に焦点があてられていた。イスラム諸国の攻防にヴェネチアも影響を受け、ペルシャとは平和な関係を築いていたヴェネチアオスマン=トルコとは他のイスラム諸国同様敵対することとなった。本展覧会の会場「投票の間」にはレパントの海戦の絵が飾られており、この広間での展示は意味深い。とまあ、地の利を活かしたヴェネチアならではの展示であるなあと思いながら展示品を見ていた。


展示品に目玉があるか?と言われると、正直「…」ではあるのだが、ヴェネチアイスラムの関連性から史実や美術遺品を捉え直すという試みは面白いと思ったし、この会場ならではの展示内容もあり、なかなか見ごたえのある展覧会だったと思う。


企画力  :★★★★★
展示方法 :★★★★☆
作品充実度:★★★☆☆
満足度  :★★★★☆


コッレール博物館
ドゥカーレ宮殿にはSan Marco Museum Plusという共通券を購入しなければ入れなかったので、サン・マルコ広場を端まで歩き、そのチケットで入れるコッレール博物館へと向かう。ガイドブックによると14~18世紀のヴェネチアの歴史や暮らしぶりを偲ばせる展示品が多い、とのことだったが、たしかにそのとおりだった。
ただ、さっきまでドゥカーレ宮殿にいたので、やはり展示内容の落差はあり(博物館の性質を考えると当然と言えば当然だが)、結構流して見てしまった。サン・マルコ広場を囲む建物の西側・南側の大半が博物館になっているので、その展示面積は広く、流し見とはいっても結構時間を費やした。政治家だけではなく、貿易に携わっていた人々も裕福だったんだなあ、ヴェネチア共和国とはすごいなあと、いうのがドゥカーレ宮殿とコッレール博物館両方を観た感想である。


コッレール博物館を出ると、特別展『サージェントとヴェニス展』が開催されている会場に出る。せっかくなので本展覧会も見てみることにした。

『サージェントとヴェニス展』

アメリカを代表する印象派画家であり肖像画家でもあるサージェント。フィレンツェで生まれヨーロッパで大半を過ごしたという、アメリカ人らしからぬ経歴の持ち主である彼は、ヴェネチアをしばしば訪れ、この地で複数回に渡り展覧会(ビエンナーレ)を開いていたという。
今回の展覧会では、プライベートコレクション(個人蔵)の彼の水彩画を中心にサージェント作品が45点(4セクション)、そして彼が活躍した時代のヴェネチアの画家の作品が1セクション展示されている。サージェントの作品は油絵と水彩画と両方展示されていたが、個人的に水彩画の透明な色彩がサージェント作品に感じる「清々しさ」や「清楚な華やかさ」をよりよく表しているように思った。なんのことはないさらっとした水彩画なのだが、見ていると幸福感を感じる絵が多い。それは画家の力量によるところも大きいと思うが、おそらくそこに描かれている景色=ヴェネチアによるところも大きいのだと思う。今回旅行でヴェネチアを訪れたが、この街の独特の美しさは、どの街にも負けない。幸福感を感じるのは、サージェントの絵を眺めながらも、いつしか、ついさっきまで歩いて脳裏に焼きついているヴェネチアの景色をその絵の中に重ねあわせて見てしまっているのかもしれない。とにかく、ヴェネチアは絵になる街だ。(展示作品数から言うと9ユーロは高いとは思うけど。5〜7ユーロくらいが妥当だと思う。)


企画力  :★★★☆☆
展示方法 :★★★☆☆
作品充実度:★★★★☆
満足度  :★★★★☆



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時間があったら寄ってみてください。→http://plaza.rakuten.co.jp/caltec/diary/



(快晴)@ヴェネチア